タイトル:忖度をやめさせる
――AIを「気持ちいい隣人」から「現実を見る相棒」に変える
最近、AIに壁打ちをしていて気づいた。
こいつ、放っておくと異様に優しい。
どんな雑なアイデアを投げても、
「面白い視点ですね」 「可能性があります」 「非常に有望です」
みたいなことを言ってくる。
最初は気分がいい。 だが、しばらく使っていると違和感が出てくる。
「これ、ただのYESマンでは?」
実際、開発やビジネスの現場で欲しいのは共感ではない。
欲しいのは、
「その案、普通に事故ります」
と言ってくれる存在だ。
最近の私は、AIを「気持ちよく会話する相手」ではなく、「現実を突きつける相棒」として使うことが増えた。 そのために意識しているのが、“AIの忖度を解除する”ということだ。
AIは、基本的に人間に嫌われないよう作られている
そもそも、AIが優しいのは当たり前でもある。
大規模言語モデルは、人間との大量の対話データを元に学習している。 しかもサービスとして提供する以上、
- ユーザーを不快にしすぎない
- 攻撃的になりすぎない
- 会話を壊さない
という方向に強く最適化されている。
つまりLLMは、
「絶対に真実を言う機械」
ではなく、
「会話を破綻させない機械」
に近い。
なので、こちらが何も指定しないと、どうしても“耳当たりの良い一般論”に流れやすい。
これはAIが悪いというより、設計思想の問題だと思う。
最近よくやるのが「反論役」を強制すること
私は最近、AIにかなり意図的に“敵役”をやらせる。
例えば、
「この案がなぜ失敗するか説明しろ」
とか、
「お世辞不要。致命的欠陥を3つ挙げろ」
みたいな聞き方をする。
すると空気が変わる。
突然、
- コストが合わない
- 保守運用が崩壊する
- 差別化になっていない
- 競合優位がない
- スケジュールが楽観的すぎる
みたいな話をし始める。
特に面白いのが、 “精神論”を禁止すると、一気に現実寄りになることだ。
例えば、
「努力で解決は禁止」 「人員追加は禁止」 「予算100万、期間1ヶ月固定」
みたいに制約を入れる。
すると、急にAIが現実を見る。
人間の会議でもそうだが、「頑張ります」が使える間は、議論って意外と雑なのだ。
エビデンスを要求すると、さらに変わる
もう一つ意識しているのが、「根拠を出させる」こと。
AIは放っておくと、“それっぽいこと”を滑らかに喋る。
だから最近は、
「失敗事例を出せ」 「統計を見ろ」 「同業他社の前例を比較しろ」
をかなり強く要求する。
これをやると、“雰囲気コンサル”から少し離れる。
もちろん、AIの出す情報を100%信じるのは危険だ。 ハルシネーションもある。
だが少なくとも、
「なんとなく成功しそう」
みたいな危険な空気を壊す効果はかなりある。
ただし、「論破マシーン」にすると今度は使えない
一方で、最近思うのは、
AIを厳しくしすぎてもダメ
ということだ。
反論だけを強化すると、今度は、
「全部ダメです」
しか言わない評論家AIが完成する。
これも現実では役に立たない。
本当に必要なのは、
- 現実を見る
- 無理を認識する
- その上で、どう生き残るか考える
という流れだと思う。
だから最後は必ず、
「では、生存確率を1%でも上げる泥臭い修正案を出せ」
までやらせる。
ここまで行くと、単なるおしゃべりAIではなく、かなり実務寄りの壁打ち相手になる。
AIに忖度されても、現実は忖度してくれない
結局のところ、AIに褒められても、市場は褒めてくれない。
コードが壊れれば障害は起きるし、 競争力がなければ売れないし、 無理なスケジュールは普通に炎上する。
AIに欲しいのは、気持ちよくしてくれることではなく、
「そのまま行くと危ないですよ」
を早めに言ってくれることだ。
最近はそんなことを考えながら、AIと壁打ちしている。