SESか自社開発か。そんなことより、明日なにを書くの?
SNSを見ていると、また例の宗教戦争が始まっていた。
「SESはやめとけ」 ※SESとはエンジニア派遣業、客先に自社のエンジニアを常駐させる業態で日本独特のビジネスモデル 「自社開発こそ勝ち組」 「いや、スタートアップで修羅場を経験しろ」 「大企業は技術力が死ぬ」
エンジニア界隈は本当にこの手の話が好きだ。
まるで野球ファンが阪神と巨人で争っているようなもので、本人たちは真剣なのだろうが、外から見ると「で、結局何作ってるの?」という話だったりする。
私自身、長くこの業界にいるが、正直なところ最近はこう思う。
SESか自社開発かなんて、どうでもいい。
大事なのは、その会社で明日から何を書くのか。それだけだ。
自社開発という名の夢の国
若い頃は私も憧れた。
自社サービス。 モダンな技術。 優秀なエンジニア。 自由な技術選定。
なんとも魅力的な響きである。
ところが実際に入ってみると、
「このシステムは2008年に作られました」
などと言われる。
気づけば誰も触りたがらない巨大なPHPプロジェクトと向き合い、コメントもドキュメントも消えたコードの発掘作業をしている。
自社開発とは何だったのか。
もちろん素晴らしい会社もある。
だが「自社開発」というラベルだけで技術的な楽しさが保証されるわけではない。
むしろ、自社サービスだからこそレガシーシステムを延々と抱え続けるケースも多い。
SESという名の悪役
一方でSESは叩かれる。
SNSではだいたい悪の組織みたいな扱いだ。
確かに問題のある会社もある。
「とりあえず人を送る」 「スキル詐称して人を押し込む」 「常駐先が決まらないから家電量販店で販売員をさせる」
そんな営業主導の案件も存在する。
だから悪評が立つのも理解できる。
しかし面白いことに、私が見てきた中で最先端のAWSを触っていた人も、巨大トラフィックのシステムを触っていた人も、AI案件を回していた人も、普通にSESや業務委託だったりする。
結局、SESだから技術レベルが低いわけではない。
たまたま入った現場次第だ。
むしろ案件を選べる立場になれば、
「次はクラウドをやろう」
「今度はAI案件をやろう」
「金融は飽きたからECに行こう」
ということもできる。
一つのサービスに人生を預ける必要がないのは、案外大きなメリットだ。
給与より技術スタック
エンジニアは給与の話も好きだ。
もちろん生活があるので大事だ。
だが、将来を考えるなら給与明細より技術スタックを見たほうがいい。
年収が少し高くても、
- 誰も使わない独自フレームワーク
- 誰も知らない社内ツール
- 退職者しか仕様を知らないシステム
に囲まれて数年過ごしたら、市場価値はあまり上がらない。
逆に多少条件が悪くても、
- AWS
- Kubernetes
- AI
- データ基盤
- モダンなフロントエンド
などに触れられるなら、後で回収できる可能性は高い。
結局エンジニアは職種ではなく、触ってきた技術で評価される。
ラベルではなく仕事内容を見る
私は面接や案件の話を聞くとき、
「SESですか?」 「自社開発ですか?」
よりも先に、
「何を作るんですか?」
と聞く。
そこにしか興味がない。
なぜなら、エンジニア人生を変えるのは契約形態ではなく、毎日触るコードだからだ。
おわりに
世の中には、
「SESだから辞めろ」
「自社開発だから勝ち組」
と断言する人がいる。
だが、その人たちは案外プロジェクトの中身を見ていない。
肩書きや会社名で人を判断するのは簡単だ。
しかしエンジニアの価値を決めるのは名刺ではない。
結局のところ、
明日あなたが開くリポジトリが何であるか。
それだけだ。
そして現実には、そのリポジトリの中身を見ずに「自社開発だから勝ち」「SESだから負け」と語っている人が驚くほど多い。
エンジニアなのだから、本来見るべきなのはラベルではなくソースコードのはずなのだが。