とうとう日本でも始まった。コールセンターのAI化で感じた「日本流」の落としどころ
先日、電力会社に支払いの件で問い合わせをすることになった。
電話をかけると、お決まりの「○○の方は1番を…」という音声ガイドが流れる。
ここまでは昔からあるIVRだ。
しかし、その先が違った。
とうとう日本でも、AIが電話口で普通に相手をする時代になっていた。
AIが本人確認をする時代
AIから最初に聞かれたのは、ごく普通の本人確認だった。
「お名前をお願いします」
「携帯電話番号をお願いします」
「お客様番号を入力してください」
面白かったのは入力方法である。
お客様番号のような数字はプッシュボタン入力。
住所のような複雑なものは口頭で話す。
AIが音声認識して処理していく。
このあたりは、人間のオペレータと変わらない。
少なくとも住所を一文字ずつ復唱されるよりはストレスはない。
そして本人確認が終わると、人間のオペレーターへ切り替わった。
ここでも少し驚いた。
私の情報はすべて引き継がれていた。
昔なら、
「お名前をお願いします。」
「電話番号をお願いします。」
「生年月日をお願いします。」
と、さっき話したことをもう一度最初から説明する儀式が始まっていた。
今回はそれがない。
オペレーターはすぐ本題に入った。
これは正直かなり快適だった。
AIに全部任せると、意外とうまくいかない
海外ではもっと先まで進んでいる。
ニュースやYouTubeなどを見ていると、電話対応をほぼAIだけで完結させようとしている企業も珍しくない。
もちろん単純な問い合わせなら問題ない。
しかし、少し複雑になると途端に話がかみ合わなくなる。
「人間につないでください。」
「申し訳ありません。もう一度ご用件をお話しください。」
「だから人間を……」
「申し訳ありません。もう一度ご用件をお話しください。」
そんな笑えない話も珍しくない。
AIはルールどおりには強い。
しかし、「この人は困っているから例外対応しよう」という判断はまだ苦手だ。
日本は慎重すぎる…と思っていたが
日本は新しい技術を導入するとき、慎重すぎると言われる。
AIについてもそうだ。
海外では「全部AI」。
日本では「最後は人間」。
ぱっと見た感じ日本は遅れているように見える。
ところが今回体験してみると、この設計は案外悪くない。
面倒な本人確認や情報収集はAIがやる。
最終判断や例外対応は人間がやる。
役割分担がはっきりしている。
AIを使うことが目的ではなく、利用者のストレスを減らすことが目的になっている。
この順番は意外と大事なのかもしれない。
AIは人間を置き換えるより、人間を楽にするほうが向いている
最近は何でも「AIが人間を代替する」という話になりがちだ。
もちろん、その方向へ進む仕事もあるだろう。
しかし今回の体験では、「AIが人間を補助する」という形のほうがずっと自然に感じた。
AIは同じ質問を何万回繰り返しても疲れない。
人間は、そこを任せられたほうが本当に困っているお客様に集中できる。
今のところは、このくらいの距離感が一番しっくりくる。
もっとも、数年後にはそのオペレーターまでAIになっているかもしれない。
そのとき、「やっぱり人間を出してください」が通じる世界のままでいてくれるといいのだが。