「勝手に持ってけ」で開発が回る。MCPで資料整理が雑になった現場と、Anthropicが止まる恐怖

最近、プロジェクト内でこんなことを言われる。

「仕様書とか画面設計書とか、Boxにいろいろ置いてあるから。最近は整理してないし、勝手に持ってって」

少し前の開発現場なら、かなり困る話だった。

どのフォルダに何があるのか。どれが最新版なのか。似た名前のExcelが3つあるけど何が違うのか。

「ちゃんと整理してください」と言いたくなる。

ところが最近は、これで普通に仕事が回っている。

理由は単純で、私が探さないからだ。

Claudeに探させている。

MCPでBoxをつないだら、人間が資料を探さなくなった

MCP経由でBoxなどのストレージにアクセスできる環境があると、資料の探し方が完全に変わる。

「この機能の画面設計書を探して」

「この仕様に関係する資料を確認して」

「古い資料も含めて、仕様が矛盾していないか調べて」

だいたいこれで済む。

人間なら、まずBoxを開いてフォルダを眺める。検索して、ファイル名を見て、Excelを開いて、違ったら閉じる。

Claudeはその辺を勝手にやる。

もちろんAIなので間違える可能性はあるし、「最新」と書いてある古い資料を信じる危険もある。だから最終確認は必要だ。

それでも、人間がゼロから資料を探すより圧倒的に楽である。

その結果、資料整理そのものが雑になってきた。

これは良いことなのか悪いことなのか、正直よく分からない。

以前なら「ドキュメント管理ができていない現場」と怒られそうな状態だ。しかし今は、AIが雑多な資料の中から必要な情報を探してくれる。

人間のために整理された資料置き場である必要が、少しずつなくなっている。

少なくとも私は、Boxのフォルダ構成を以前ほど気にしなくなった。

ただ、Anthropicが止まったらどうするんだろう

そんな仕事をしていて、ふと思った。

Anthropicが数日止まったら、このプロジェクトどうなるんだ?

Claudeが一時的に使えない程度なら、まあ待てばいい。

しかし数日単位で止まったら、かなり困る。

Boxには「勝手に持ってけ」と言われた資料が大量にある。私はその構造を詳しく知らない。どこに何があるのかも覚えていない。

なぜなら、覚える必要がなかったからだ。

Claudeに聞けばよかった。

コードも同じである。

最近は、既存コードの調査、影響範囲の確認、設計の相談、テストの整理までかなりClaudeに任せている。

Claudeが使えなくなったからといって、私が突然プログラムを書けなくなるわけではない。

30年近くエンジニアをやっているので、さすがにそれはない。

ただし、速度は確実に落ちる。

おそらく自分が想像している以上に落ちる。

昔の開発速度に戻るだけ、と言えばそれまでだが、問題は現在のスケジュールが昔の開発速度を前提にしていないことだ。

AIで速くなった分、当然のように仕事量も増えている。

そこで突然AIだけ消えたら、結構な地獄になる。

インフラは冗長化するのに、開発はAnthropic一本足打法

エンジニアは単一障害点を嫌う。

サーバーを冗長化しろ。

AZを分けろ。

バックアップを取れ。

障害時の復旧手順を用意しろ。

普段はそんなことを言っている。

ところが自分の開発環境を見ると、かなりの部分をClaudeに依存している。

思考と調査のSPOFがAnthropicである。

なかなか笑えない。

一応、Codexなど別のAIも使っているので完全な一本足ではない。しかし、Claude Codeを中心に組んだ開発フローをそのまま別のAIへ移せるかと言えば、そんなに簡単ではない。

MCPの接続、CLAUDE.md、Skill、これまで整えてきた運用ルール。

気づけばClaudeを使っているのではなく、Claudeがいることを前提に仕事のやり方そのものを変えてしまった。

これが一番怖い。

たぶん、もう元には戻らない

だからといって、AI依存をやめようとは思わない。

「Anthropicが止まるかもしれないから、今日から自分でBoxを探します」

そんなことをする気はまったくない。

便利なものは使う。

Claudeに探させた方が速いなら探させるし、コードを読ませた方が速いなら読ませる。

ただ、最近の開発現場では、AIが便利なツールという段階を超えて、AIが存在することを前提に現場の構造そのものが変わり始めている気がする。

資料整理が雑でも仕事が回る。

人間が全資料の場所を知らなくても仕事ができる。

それは間違いなく便利だ。

そして今日も私はClaudeに言う。

「Boxにあるから、勝手に探して」

……Anthropic、頼むから止まらないでくれ。