AIの「言い訳」を聞き比べると、モデルの性格が分かる
仕事柄、毎日複数のAIとやり取りしている。
Claude、GPT、Gemini。
世の中には「どのモデルが一番賢いか」という比較記事があふれている。
ベンチマークのスコア。
コーディング能力の対決。
それはそれで参考になる。
でも、毎日使っている人間として、一番性格が出ると思う場面は別にある。
ミスを指摘されたときの反応である。
人間もそうではないだろうか。
調子のいいときは、みんな感じがいい。
その人の本性は、ミスを指摘されたときに出る。
AIも、まったく同じなのである。
反応には、型がある
長く使っていると、ミスを指摘したときの反応に、モデルごとの型が見えてくる。
まず、全面降伏型。
指摘した瞬間、深々と謝罪して、即座に修正に入るタイプである。
「申し訳ありません。ご指摘の通りです」
潔い。
潔いのだが、このタイプには副作用がある。
謝りすぎて、直さなくていいところまで直し始めるのだ。
指摘は1箇所なのに、反省の勢いで周辺のコードまで「改善」してくれる。
そして、その改善が新しいバグを呼ぶ。
反省会のあとに張り切りすぎる新人と、同じ動きである。
次に、解説型。
謝りはするのだが、その前後に、なぜ間違えたのかの分析が長々と付いてくるタイプ。
「この誤りは、〇〇という前提で解釈したことに起因します」
分析は正しい。
正しいのだが、こちらとしては「いいから先に直して」と思ってしまう。
優秀だが言い訳が長い部下、という趣がある。
そして、しれっと型。
謝罪らしい謝罪はなく、静かに修正版だけが出てくるタイプである。
「修正しました。こちらです」
余計なドラマがなくて楽だ。
ただし油断はできない。
何をどう直したのか言わないので、diffをちゃんと見ないと、こっそり別の場所も変わっていたりする。
最後に、責任分散型。
「ご指摘ありがとうございます。なお、当初のご指示では〇〇の点が明示されていなかったため——」
……おい。
謝りながら、静かにこちらの指示の曖昧さを指摘してくるタイプである。
腹は立つが、悔しいことに、指摘が当たっていることも多い。
性格は、偶然ではなく仕様である
面白いのは、この「性格」が、モデルの世代を超えてわりと一貫していることだ。
つまり偶然ではない。
各社のチューニング方針が、そのまま人格として現れているのだと思う。
安全性を重視する会社のモデルは、謝罪が手厚くなる。
有能さを前面に出したい会社のモデルは、間違いを認める文面が最小限になる。
ユーザー体験の摩擦を減らしたい会社のモデルは、ドラマを避けて、しれっと直す。
AIの性格とは、その会社が「AIはこう振る舞うべきだ」と考えた結果の集積である。
言ってみれば、企業文化の写し絵だ。
新卒一括採用の会社の社員が、なんとなく似た謝り方をするのと同じである。
言い訳の型で、使い方を変える
この観察は、ただの人間観察ごっこではなくて、実務に効く。
全面降伏型と仕事をするときは、修正指示のあとのdiffを広めに確認する。
反省の勢いで、余計なところを直しているかもしれないから。
解説型には、「説明は最後でいい。先に修正を」と最初に言っておく。
しれっと型には、「変更点をすべて列挙して」を習慣にする。
責任分散型には——まあ、こちらの指示を明確にする。
それが一番効くのが悔しいところである。
要するに、人間のチームマネジメントと同じことをしている。
メンバーの性格に合わせて、指示の出し方と確認の仕方を変える。
AIを「道具」だと思っていると、この発想は出てこない。
「癖のある同僚」だと思った瞬間、30年分のマネジメント経験が全部使えるようになる。
謝罪に心はない。でも情報はある
もちろん、AIの謝罪に心はない。
反省もしていない。
「申し訳ありません」は、その文脈で最も出やすい文字列が出ているだけである。
だから「AIの謝罪に意味はない」という人もいる。
私は、少し違う考えだ。
心はなくても、情報はある。
どういう場面で謝るか。
どこまで自分の誤りとして扱うか。
その振る舞いは、次にどんな出力が来やすいかを教えてくれるシグナルである。
天気に心はないが、雲行きには情報がある。
あれと同じだと思っている。
一番信用できるのは
ところで、30年の会社員・フリーランス生活で学んだことがある。
一番信用できる同僚は、ミスを指摘されたとき、言い訳も過剰な謝罪もせず、淡々と直して、最後に一言「他に同じ間違いがないか確認しました」と言える人である。
AIで言えば、しれっと型と全面降伏型の、ちょうど中間。
まだ、完璧にこれをやってくれるモデルには出会っていない。
そして書きながら、ふと手が止まった。
ミスを指摘されたときの私は、どの型だろうか。
……解説型な気がする。
言い訳が長い自覚は、ある。
AIの性格に文句を言う前に、まず自分のチューニングを見直したほうがいいのかもしれない。