エンジニア歴30年のスキルシートを読み返したら、自分の仕事の正体が分かった

先日、スキルシートを更新した。

フリーランスなので、定期的に更新している営業資料である。

書き終えて読み返してみて、ふと気づいたことがある。

30年分の案件を並べると、自分の仕事の正体が見えてくる。

今日はその話をしたい。

キャリアの内訳

私がこの業界に入ったのは1996年である。

最初は受託開発の会社に入った。

当時はクラウドどころか、サーバは会社の片隅で唸っている物理マシンだった。

その後、大手WEB制作会社の開発部門に13年いた。

JAVAやPHPでのサイト構築、PM、ブリッジSE、開発部門のマネージャ職まで一通りやった。

そして2014年に独立して、フリーランスになった。

以来、ずっと現場でコードを書いている。

並べてみると一貫性がない

スキルシートに並んでいる案件は、こんな感じである。

LLMを使ったコールセンター向けチャットサービス。

IoT端末10万台をリアルタイム監視する大規模システム。

大手スーパーのPOSデータを集約するデータウェアハウス。

官公庁向けのAWS移行POC。

音楽ライブ中継サイトの環境移行。

Ionicを使ったライブコマースアプリ。

不動産会社の街情報検索サービス。

見事にバラバラである。

業種も違う。規模も違う。技術スタックも違う。

営業資料としては「で、あなたの専門は何ですか」と聞かれそうなラインナップだ。

でも、役割は毎回同じだった

ところが、案件ごとの「役割」の欄を見て気づいた。

ほとんどの案件に、同じ言葉が並んでいる。

技術リサーチ。サンプルプログラム作成。インフラ構築。

つまり私の仕事は、こういうことだ。

誰もやり方を知らない段階で呼ばれる。

調べる。

動くものを最初に作る。

動く環境を用意する。

チームのメンバーに使い方を教える。

軌道に乗ったら、あとはチームが進めていく。

要するに、プロジェクトの「最初の1人」が私の仕事だったのである。

「最初の1人」の需要は意外と多い

考えてみれば、どのプロジェクトにも「最初」がある。

LLMを使いたいが、社内に使ったことのある人がいない。

AWSでサーバレスにしたいが、設計できる人がいない。

POCで実現可能性を確かめたいが、誰に頼めばいいか分からない。

この「最初の壁」を越えるのが、一番難しい。

本やドキュメントを読んでも、動くものは出てこない。

だから、調べながら動くものを作れる人間が呼ばれる。

30年間、業種も技術もバラバラの案件を渡り歩けたのは、専門分野が広いからではない。

「未経験の技術を調べて、動かして、人に渡す」という仕事自体が専門だったからだ。

AIで「最初の1人」はさらに速くなった

最近の案件では、この仕事のやり方が大きく変わった。

たとえば直近では、複数のWEBアプリ用のAWSバックエンド環境を、ほぼボタン1つで構築できるシステムを作った。

要件定義からAIを使ってCDKのコードを生成し、実装期間を劇的に短縮した。

官公庁向けの帳票エディタPOCでは、要件定義の打ち合わせ中に、動くプログラムをその場で修正しながら仕様を固めていく。

昔なら「持ち帰って2週間」だったものが、いまは会議中に画面が動く。

「最初の動くもの」を出すまでの時間が、AIによって桁違いに縮んだのである。

これは私のような仕事にとって、革命に近い。

30年で変わったこと、変わらないこと

物理サーバはクラウドになった。

手書きの設計書はCDKのコードになった。

そして実装の相棒は、人間からAIになった。

技術は全部入れ替わった。

でも、仕事の本質は変わっていない。

誰もやったことがないことを、調べて、動かして、渡す。

1996年も2027年も、私がやっているのはこれだけである。

スキルシートというのは不思議なもので、書いているときは案件の羅列にしか見えない。

30年分を並べて初めて、自分の正体を教えてくれる。

もしあなたのプロジェクトに「最初の1人」がいないなら。

その仕事、たぶん私の専門です。