AIで生産性10倍? で、その10倍作ったものを誰に売るの?
YouTubeを見ていると、最近やたらと景気のいい話が流れてくる。
「AIで無料の社員を作ろう!」
「生産性が10倍になる!」
「AI社員を100人雇えば、寝ている間にも仕事をしてくれる!」
結論から言えば、これは全部本当だ。
少なくとも私はエンジニアとして毎日AIを使っているが、生産性は明らかに上がった。以前なら3日かかっていた作業が1日で終わることもある。調査やドキュメント作成なら、丸一日の仕事が数十分で終わることすらある。
AIは文句を言わない。残業代も要求しない。パワハラで訴えてくることもない。
しかも24時間働く。
確かに夢の無料社員である。
ただ、私はこの手の動画を見るたびに、一つだけ疑問に思う。
で、その10倍作ったものを誰に売るの?
なぜか誰も、この話をあまりしない。
無料社員100人を雇って、倉庫をゴミでいっぱいにする
AIを使えばブログを100本書ける。
動画も大量に作れるし、プログラムも作れる。資料も企画書も営業メールも、いくらでも量産できる。
素晴らしい。
では、その大量生産したものを誰が買うのだろう。
工場の生産能力が10倍になったからといって、客が10倍になるわけではない。
商品が売れなければ、倉庫に在庫が積み上がるだけだ。
AIの場合、在庫を置く倉庫すら必要ないので気づきにくい。
ブログ1000本。
YouTube動画500本。
SNS投稿1万件。
誰にも読まれない。
無料社員100人を雇って、インターネット上にゴミを撒き散らしているだけである。
これを「AIによる生産性革命」と呼ぶのなら、なかなか面白い革命だと思う。
「営業もAIにやらせればいい」――はいはい、LINE登録ですね
すると、少し知恵の回る人が言う。
「営業もAIにやらせればいい」
AIにブログを書かせる。
SNSへ自動投稿する。
AI美女に動画で喋らせる。
興味を持った人をLINEへ誘導する。
無料相談。
最後は高額コンサル。
はいはい、またそれですね。
YouTubeを少し見れば、この手のビジネスモデルはいくらでも出てくる。
そして問題は、みんな同じことをやっていることだ。
妙に綺麗にまとまったブログ。
「知らないと損する〇〇5選」
「実は9割の人が知りません」
不自然に美人なAI女性。
最後は「詳しくはプロフィールのLINEから」。
もう見飽きた。
AIを毎日使っている私からすると、文章もなんとなくわかる。
「ああ、AIに書かせたな」
もちろん100%判別できるわけではない。
ただ、AI特有の妙に綺麗な構成や、同じ意味の文章を言い換えて水増しする書き方を見ると、読む気がなくなる。
皮肉なことに、AIで営業コンテンツを大量生産できるようになった結果、AI営業そのものが急速にゴミ化している。
誰でもできることは、すぐに価値がなくなる。
当たり前の話だ。
最後に金を払う瞬間、人は相手を見る
仮にAIを使って集客に成功したとする。
ブログを読んでもらい、問い合わせが来て、Zoomで話すことになった。ここまではAIでかなり効率化できる。
では、数十万円の仕事を依頼するとき、本当にAIだけで契約するだろうか。
少なくとも私はしない。
この人は信用できるのか。話が通じるのか。こちらの意図を理解しているのか。問題が起きたら逃げないのか。
結局、最後は人を見る。
私は長くフリーランスをやっているが、契約なんてかなり人間臭いものだ。
技術力や資格、AIに詳しいという経歴だけで単純に契約が決まるわけではない。
最後は「こいつなら任せても大丈夫そうだ」という感覚が入る。
数万円の商品ならAI営業でも売れるかもしれない。
しかし数十万円、数百万円の仕事になれば、相手の顔も見ず、話もせず、AIの営業トークだけで金を払う人がどれだけいるのだろう。
少なくとも私は嫌だ。
トラブルが起きたとき、AIは責任を取らない。
Claudeに電話しても出てくれない。
最新AIを使い倒した結果、やることは昔ながらの営業だった
AIで生産性10倍。
これは嘘ではない。私自身、その恩恵を毎日受けている。
ただし、生産性が10倍になっても客は10倍にならない。
AI社員を100人作っても、客がゼロなら売上はゼロだ。
そして営業までAIに丸投げすれば、同じことを考えた人間がAIコンテンツを大量に撒き始める。
すでにそうなっている。
結局、AIには面倒な作業をやらせて、人間は客と話す。
最新のAIを使い倒し、無料社員を何人も働かせた結果、最後にやることは昔ながらの泥臭い営業だ。
AI革命の結論が「最後は人間関係です」だったら、なかなか笑える話である。
なお、実はこのブログもAIを使って書いていることは内緒である。