PHPが「革命児」だった頃の話

最近、PHPのコードを触っていて、ふと思った。

「ああ、PHPも完全に“ベテラン言語”になったな」と。

今の若いエンジニアからすると、PHPって最初からLaravelがあって、Composerがあって、ちゃんとクラスを書いて、DIして、みたいな「普通のWeb開発言語」に見えるのかもしれない。

でも、私が最初にPHPを見た時の印象は、今とはかなり違う。

当時、Javaは王様だった。

Enterprise JavaBeansだの、WARファイルだの、アプリケーションサーバだの、とにかく重厚長大。 もちろん真面目で堅牢だったし、大規模開発には向いていたと思う。

でも正直、開発者からすると重かった。

そんな時に現れたのがPHP。

初めて見た時の衝撃は今でも覚えてる。

サーバに .php ファイルを置くだけで動く。

本当にそれだけ。

「え、コンパイルは?」 「デプロイ作業は?」 「設定ファイルは?」

みたいな感覚だった。

今の感覚で言うと、「HTMLにちょっとコード書いたらそのままWebアプリになった」ぐらいの雑さと軽さがあった。

でも、その雑さが革命だった。


もちろん、当時のPHPはかなりひどかった。

今だから笑い話っぽく語れるけど、本当にカオスだったと思う。

関数名の命名規則は統一感ゼロ。

アンダースコアがあったりなかったり。

引数順もバラバラ。

グローバル変数も飛び交う。

セキュリティ事故も多かった。

そして何より、「適当に書いても動いてしまう」。

これは初心者にとっては最高だったけど、数年後の保守担当者にとっては地獄だった。

実際、当時のPHP案件って、開くと巨大な1ファイルにHTMLとSQLとロジックが全部混ざってたりした。

今なら新人レビューで止められるようなコードが、本番で普通に動いていた時代。

でも、その「雑でも動く」強さが、Webを一気に広げた。

WordPressもFacebookもPHPだった。

エンジニア界隈では「PHPはクソ」と言われ続けていたのに、現実世界ではPHPがWebを支配していた。

あの頃、「技術的に美しいものが勝つとは限らない」というのをかなり学んだ気がする。


その後、PHPはどんどん“まとも”になっていった。

名前空間が入り、型が入り、Composerが入り、Laravelみたいな強力なフレームワークが出てきた。

昔のPHPを知ってる人間からすると、かなり驚いた。

「え、PHPでこんな綺麗なコード書けるの?」みたいな。

ただ、その頃から少しずつ違和感も出てきた。

DI。 サービスコンテナ。 ORM。 イベント駆動。 複雑なディレクトリ構造。

気づいたら、

「あれ、これJavaと何が違うんだ?」

となっていた。

もちろんLaravelはよく出来てる。 実際、生産性も高い。

でも、昔のPHPが持っていた「野生の便利ツール感」は消えていった。

サーバに1ファイル置いてニヤニヤしていた頃の空気は、もう無い。


私自身、キャリアのかなり長い時間をPHPと過ごした。

たぶん人生で一番書いたコードはPHPだと思う。

バグも大量に踏んだし、深夜障害対応もしたし、訳の分からないレガシーコードとも戦った。

だから愛着はある。

でも、「最近のPHPにワクワクしてるか?」と言われると、正直そうでもない。

今のPHPって、ある意味、JavaとかCOBOLと同じ位置に来たと思う。

つまり、

「社会を支える巨大な既存資産」

になった。

もう革命児じゃない。

インフラ側だ。

銀行とか役所とか巨大サービスとか、そういう“止められないもの”を支える側。

だからPHPエンジニアの需要は、たぶん今後も普通に続くと思う。

新技術として盛り上がることは減っても、「現実を回す人材」としてはずっと必要。

実際、古いPHP案件って山ほど残ってる。

そして、それを誰かが直し続けないと社会が止まる。


昔、Webの世界をぶっ壊して回った革命児が、気づいたら保守本流の重鎮になっていた。

なんだか人間みたいだなと思う。

私も歳を取ったということかもしれない。