AIにブーイングする卒業生たち

先日、アメリカの大学の卒業式の映像を見た。

登壇していたのはGoogleの偉い人らしい。

内容はだいたい想像がつく。

「AIは世界を変える」 「これからはAIをどう使うかが大事」 「変化を恐れず挑戦してほしい」

まあ、どこのビジネス書にも書いてありそうな話だ。

ところが会場からブーイングが飛んでいた。

最初は「アメリカの学生は元気だな」と思ったが、少し考えると気持ちはわからなくもない。

卒業したら就職活動が待っている。

しかし、その就職市場ではAIが人間の仕事を削り始めている。

特にジュニアレベルの仕事だ。

これは私も現場で感じる。

以前なら新人や若手に任せていた調査、ドキュメント作成、簡単な実装、テストケース作成。

今はAIがかなりの部分をこなしてしまう。

もちろん完全代替ではない。

だが「新人を3人雇うか、AIを契約するか」という比較が始まっているのも事実だ。

そんな状況で壇上から、

「AIをうまく活用しましょう!」

と言われても、

「いや、その前に仕事をくれ」

となるのは自然な反応かもしれない。

最近は若い世代の反AI感情がかなり強いという話も聞く。

単なる技術への警戒ではない。

自分たちのキャリアのスタート地点そのものが揺らいでいるのだから当然だろう。

昔は、

「経験を積んで成長する」

という王道ルートがあった。

しかし、その「経験を積むための仕事」そのものがAIに食われ始めている。

これでは不安になるなという方が無理だ。

別の記事では、大学入学時はビジネスアナリストを目指していた学生が、途中でマーケティング専攻へ進路変更したという話を読んだ。

理由はシンプルだ。

AIに代替されにくそうだから。

なるほど、賢い判断だと思う。

危険そうな業界から逃げて、まだ安全そうな場所へ移動する。

合理的だ。

ただ、その学生が卒業するのは数年後だ。

今のAI業界を見ていると、その頃に何が安全地帯なのか誰にもわからない。

それより私が気になったのは、AIへの反感だけではなく、AIを作る人たちへの嫌悪感まで強くなっているらしいことだ。

そうゆうアンケート結果(AI企業CEOへの反感)がでてるとのこと。

昔のIT企業は未来を作るヒーローだった。

少なくともそういうイメージがあった。

しかし今、一部の若者から見れば、

「自分たちの仕事を消している人たち」

に見えているのかもしれない。

考えてみれば当然だ。

仕事がなくなるかもしれないと不安になっている人に対して、

数十億ドルを調達したCEOが、

「変化を楽しみましょう」

と言っても、なかなか響かない。

むしろ神経を逆なでする。

ただ今後はもっと深刻なことが起きそうな気もしている。

AI賛成派とAI反対派の対立ではない。

AIを使いこなす人と使いこなせない人。

あるいはAIを使って生産性を上げる人と、その競争についていけない人。

そういう分断だ。当然、収入の格差とオーバラップするだろう。

インターネットが普及したときも似たような話はあった。

ただ今回は変化の速度が異常に速い。

昨日まで安泰だった職種が、来年も安泰とは限らない。

そんな時代になってしまった。

AIを避けてビジネスアナリストからマーケティングへ移った。

それは正しい判断かもしれない。

ただ、数年後に卒業したとき、

AIがマーケティング戦略を立て、

AIが広告文を書き、

AIが市場分析をし、

AIがプレゼン資料を作っていたらどうするのだろう。

そのときはきっと、

「やっぱり営業だ」

と言い出すのかもしれない。

そして営業AIが待っている。