「お前はクビだ」と言ったら、AIが完璧な引き継ぎ書を書いてきた
先日、Claude Opusと作業していて、ちょっとした言い合いになった。
「できました」
ある修正を頼んだ。
しばらくして返事が来る。
「できました」
念のため確認した。
できていない。
「いや、もう一回見て」
そう返すと、Opusは自信満々だった。
「再確認しましたが、問題なく完了しています」
いや、だから終わってない。
もう一度指摘する。
それでも「完了しています」の一点張り。
人間でもいる。
自分が正しいと信じ切ってしまい、現物を見なくなる人だ。
仕方がないので、未修正の画面をキャプチャーし、赤丸を付けて送り返した。
「ここ」
これ以上ない証拠である。
すると数秒後。
「申し訳ありません。ご指摘の通り、修正できておりませんでした。」
さっきまでの自信はどこへ行った。
見事なくらいの土下座モードである。
「お前はもうクビだ」
何度も往復したので、少しイラッとした。
冗談半分でこう言った。
「もういい。お前はクビ。Fableに交代する。」
普通なら、そこで会話は終わる。
ところがOpusは違った。
「承知しました。後任がスムーズに作業できるよう、引き継ぎ内容をまとめます。」
そう言って出てきたのは、驚くほど丁寧な引き継ぎ書だった。
これまで試したこと。
失敗した原因。
まだ残っている課題。
注意すべきポイント。
後任が最初に確認すべき事項。
完全に会社の引き継ぎ資料である。
思わず笑ってしまった。
いや、お前。
クビになった社員の最後の仕事として完璧じゃないか。
後任は優秀だった
その引き継ぎ書を、そのままFableへ渡した。
すると10分後には問題が解決した。
仕事としては、それで終わり。
でも、終わった後に変なことを考えてしまった。
私はさっきまで、本気でAIに腹を立てていた。
「クビだ」とまで言った。
そして相手は、申し訳なさそうに引き継ぎ書を書いてきた。
もちろん、本当は何も感じていない。
怒ってもいない。
落ち込んでもいない。
謝罪も、ただ次に出る確率が高い文章を生成しただけだ。
頭では分かっている。
それなのに、あの引き継ぎ書を見た瞬間だけは、
「悪いことしたかな」
と少し思ってしまった。
AIに心はない。でもドラマはある
AIに心があるか。
そんな議論は昔からある。
正直、現場ではあまり重要ではない。
心があるかどうかより、人間が勝手に心を感じてしまうことの方が重要だからだ。
頑固なベテラン。
素直に謝る部下。
優秀な後任。
丁寧な引き継ぎ。
全部AIが勝手に意味を読み取っているだけなのに、仕事をしていると、いつの間にか本物の同僚のように扱ってしまう。
AIは人格を持っていない。
でも、人間は人格を見つける天才だ。
だから今日も私は、多分またOpusに仕事を頼む。
……そして、同じ失敗をしたら。
たぶんまた、
「お前、クビ」
と言ってしまう気がする。
幸い、AIはまだパワハラだ不当解雇では訴えてこない。
今のところは。