生粋の東京人だが、実は東京のことを全然知らなかった
私は生まれも育ちも東京である。
「東京出身です」と言うと、地方出身の人から東京の街について聞かれることがある。
「あの辺ってどんなところですか?」
「あの店知ってます?」
知らない。
東京人だから東京に詳しいと思ったら大間違いである。
特に若い頃の私は、本当に東京のことを何も知らなかった。
そもそも東京は広すぎる。
渋谷、新宿、池袋、上野、銀座など、大きな繁華街があちこちにある。それぞれ電車のターミナルになっていて、街単体でだいたい何でも揃う。
私の場合は池袋だった。
子供の頃から池袋にはよく行っていたし、買い物も遊びも池袋で事足りた。
そうなると、わざわざ渋谷まで行く理由がない。
池袋に同じような店があるのに、なぜ電車に乗って渋谷まで行くのか。若い頃の私には、その発想自体がなかった。
今では外国人観光客が大量に押し寄せる渋谷のスクランブル交差点も、初めて行ったのは大人になってからだと思う。
その後、会社が渋谷に移転して渋谷勤務になったので急に詳しくなった。
結局、人間が詳しくなるのは住んでいる場所か、働いている場所か、遊んでいる場所くらいなのだろう。
昔、京都出身の知人が「金閣寺に行ったことがない」と言っていた。
京都に住んでいて金閣寺に行ったことがない。
東京人の私からすると少し驚いたが、よく考えれば自分も似たようなものだった。
地元の観光地なんて、そんなものである。
いつでも行けると思うと行かない。
わざわざ休日に人混みの中へ行く理由もない。
東京に住んでいる人間が、休日に「今日は東京観光をしよう」とは普通考えない。
そんな私が東京のいろいろな場所に行くようになったのは、歳を取ってからだ。
きっかけは地方出身の妻である。
妻も東京の有名な場所をそれほど知らない。
だったら行ってみるか、ということで、浅草や銀座、お台場など、いわゆる東京の有名スポットに二人で行くようになった。
完全に東京観光である。
生まれも育ちも東京の人間が、50歳を過ぎて東京観光をしている。
でも、これが意外と面白い。
若い頃なら興味を持たなかった場所でも、今行くと見え方が違う。
「なるほど、外国人がここに来る理由も分かるな」と思うこともある。
最近は健康のために歩くようにしているので、行ったことのない場所へ行く理由もできた。
昨日も角川武蔵野ミュージアム(本をテーマにした博物館)まで行ってきた。
東京ですらない。
東京を知る前に隣の埼玉へ出てしまった。
まあ、そんなものだろう。
生粋の東京人だから東京に詳しいわけではない。
むしろ、いつでも行けると思っていたから何も知らなかった。
50歳を過ぎて、地方出身の妻と東京を見て回っている。
少し順番がおかしい気もするが、今さら東京を知るのも悪くない。