SESの闇 〜「エンジニア派遣大国」日本で実際に起きていること〜
日本には「自社でほとんど開発をせず、エンジニアを現場に送り込むこと」がメイン業務の会社が大量に存在する。
いわゆるSES(システムエンジニアリングサービス)と呼ばれる業界だ。 ※以降は SES=エンジニア派遣として読んで欲しい。
もちろん全部が悪いわけではない。 普通に優秀な会社もあるし、技術力の高いエンジニアも多い。
ただ、構造的にかなり歪んだ部分もある。
エンジニアなのに家電量販店へ
日本では、未経験からエンジニアになる人もかなり多い。
これは悪いことではない。 むしろ業界に人が入ってくる入口としては必要だと思う。
問題はその後。
ジュニアエンジニアは実務経験がないので、当然ながら案件に入りづらい。
すると何が起きるか。
案件が見つからない間、とりあえず別の仕事に送られることがある。
例えば、
- データセンター監視
- コールセンター
- PCキッティング
- 家電量販店の販売員
など。
「それエンジニアなの?」と思うかもしれないが、実際にある。
なぜそんなことになるのか
理由の一つは、日本の雇用文化。
日本は海外と比べると解雇のハードルが高い。
もちろん最終的には解雇もあるが、簡単には切れない。
すると会社としては、
「社内待機で給料だけ払い続けるより、低単価でもどこかで働いてもらった方がマシ」
という判断になりやすい。
結果として、
「とりあえず現場に出す」
が発生する。
実際に遭遇したケース
昔、案件終了時の引き継ぎで来たエンジニアがいた。
話してみると、実は完全未経験。
それまでやっていたのはデータセンター監視だった。
正直かなり驚いた。
しかも引き継ぐ対象は、普通に開発経験が必要なシステム。
なので、ストレートに聞いた。
「これ、引き継ぎできます?」
すると本人も困った顔で、
「無理です」
と答えた。
逆に正直で好感は持てた。
結局、その人は私が抜ける前に現場からいなくなってしまった。
経歴詐称が起きやすい構造
もっと厄介なのはここ。
SES業界では、経験が少ない人でも「経験あり」として現場に送られることが普通にある。
もちろん全員ではない。
でも構造上、かなり起きやすい。
例えば、
- 監視業務を「インフラ運用経験」と書く
- 研修を「開発経験」に近い形で盛る
- チームの一部作業を「担当したこと」にする
みたいなことが発生する。
なぜなら、経験年数が単価に直結するから。
結果として、
「話を聞くと全然できない」
という事故が起きる。
じゃあSESは全部悪なのか?
そこが難しい。
実は、日本のIT業界はSESで回っている部分も大きい。
大企業ですら大量のSESで成り立っている。
そして、未経験から入る入口として機能しているのも事実。
私自身、SESの現場で優秀な人にもたくさん会った。
ただ問題なのは、
- 教育より営業優先
- とにかく現場に出す
- スキルミスマッチ
- 多重下請け
みたいな構造。
特にAI時代になると、この「とりあえず人数を出すモデル」はかなり厳しくなる気がしている。
AIでジュニアの業務が代替できるようになると、「人数」ではなく「設計・品質管理できる人」が求められるから。
最後に
未経験からエンジニアになること自体は悪くない。
むしろ挑戦するのは良いことだと思う。
でも、本来必要なのは「現場に押し込むこと」ではなく、ちゃんと育成すること。
SESの問題は、エンジニア個人というより、業界構造そのものにある。