車輪の再発明は本当に無駄なのか
よく言われる言葉に「車輪の再発明をするな」がある。
既に優れたライブラリやツール、仕組みが存在するのに、なぜわざわざ自分で作るのか、という話だ。
実際、業務ではその通りなことも多い。 枯れた実装を使ったほうが早いし、安全だし、保守もしやすい。
ただ、個人的には逆だと思っている。 「車輪の再発明」は、今の時代むしろ過小評価されている。
特にAIで実装コストが激減した今、「使うだけ」と「自分で作ったことがある」の差は、以前よりずっと大きくなっている。
1. 自分で作ると理解度が段違いになる
例えば、このブログでもAI関連の設定や開発方法について書いている。
でも正直、世の中を探せば大抵は既にプラグイン化されている。 GitHubを探せば、インストールするだけで終わるものも多い。
なので「動かすだけ」なら、自分で作る必要はない。
ただ、既存プラグインをそのまま使うだけだと、
- 何をやっているのか
- なぜ動いているのか
- どこがボトルネックなのか
- 何が危険なのか
が、実はよくわからないままになる。
しかも、便利そうだから全部入りプラグインを入れた結果、逆に性能が落ちたり、不要な処理が増えたりすることもある。
自分で一度作ってみると、内部構造や設計思想が見える。 すると、既存ツールを見る目も変わる。
これはかなり大きい。
2. 「再発明」が本当に新しい発明になることもある
もう一つ重要なのは、「車輪の再発明」が単なる無駄では終わらないケースがあること。
例えば、Nginx は、ある意味では Apache HTTP Server の再発明とも言える。
どちらもWebサーバーであり、「既にApacheがあるのになぜ作るのか」と言われてもおかしくなかった。
でも実際には意味があった。
Nginxは、Apacheが苦手としていた同時接続性能の問題を大きく改善した。
つまり、
- 同じ「車輪」でも
- 用途が違えば
- 求められる性能も違う
ということ。
オフロード用のタイヤと、F1のタイヤと、鉄道の車輪が全部違うように、ソフトウェアも「目的特化」の価値がある。
既存ツールを無理に合わせ込むより、自分で作ったほうがシンプルで速いことも普通にある。
3. AI時代に再発明のコストが激減した
そして個人的に一番大きいと思っているのが、AIによって再発明のコストが劇的に下がったこと。
昔なら、
- 何かを自前で作るには数日〜数週間
- ライブラリ選定だけでも半日
がかかっていた。
今は違う。
- 数時間でプロトタイプが動く
- 設計の選択肢を並列に試せる
- 内部実装をAIに解説させながら作れる
つまり、「使うだけ」と「自分で作ったことがある」の差を埋めるコストが、以前よりずっと低い。
逆に言えば、AIで既存ツールをただ呼び出すだけの人と、一度自分で作って中身を理解している人の差は、これからどんどん広がっていく気がする。
4. 「再発明=悪」ではない
もちろん、毎回ゼロから作るのは非効率。
業務なら、
- 保守性
- 実績
- セキュリティ
- チーム運用
を考える必要がある。
でも、
- 学習目的
- 内部理解
- 特定用途への最適化
- 既存ツールの限界確認
という意味では、車輪の再発明には十分価値がある。
「車輪の再発明をするな」は、AI以前の時代の格言だと思う。 今はむしろ、安いコストで一度作ってみる ことが、長期的には一番効率がいい学習方法になりつつある。