IT業界は元○○の博物館だった

エンジニアを長くやっていると、この業界に来る前のバックグラウンドが本当に様々だと感じる。

普通の会社なら、新卒で入ってそのまま同じ業界という人が多いのだろう。

ところがIT業界は違う。

「え、そんな仕事から来たの?」

という人が結構いる。

一番多かったのは元ミュージシャン。

私が実際に会っただけでも3人いる。

若い頃は音楽一本で頑張っていたが、年齢とともに生活を考え、IT業界へ。

昔の日本のIT業界は、学歴よりも「やる気」と「人手不足」が勝っていた時代でもあった。

最初はテスターや運用から入り、少しずつプログラミングを覚えてエンジニアになる。

そんなルートが普通に存在していた。

次に印象的だったのはゲーム業界出身。

ゲームシナリオを書いていた人、ゲーム制作に関わっていた人。

ITとは近い世界なので、そこまで驚きはしなかった。

意外だったのは元医者。

「なんで医者をやめるのか!」

以前、元医者の芸人がテレビで「医療現場はブラックだった、無理だった」と話しているのを見たことがあるが、実際に燃え尽きて別の道へ進む人もいるようだ。

もちろん、医者を辞めてエンジニアになる人はかなり珍しい。

一番驚いたのは、元トラック運転手。

トラック運転手だけなら、まあ特別珍しくないのだが、きっかけが

「占い師に転職するならITって言われたので。」

という返事だった。

人生、何がきっかけになるかわからない。にしても占い師かよ。

その人は結局、そのままエンジニアとして普通に仕事をしていた。

日本のIT業界は、少なくとも私がこの世界に入った頃は、入るだけなら学歴不問だった。

もちろん最初は簡単な仕事しか任されない。

テスト、運用、監視。

そこから少しずつ技術を覚え、一人前になっていく。

だからこそ、他業界から挑戦する人も多かったのだと思う。

しかし最近はAIの影響もあり、ジュニアレベルの仕事が減ってきている。

もし今のような状況だったら、元ミュージシャンも、元トラック運転手も、エンジニアになることは昔ほど簡単ではないかもしれない。

少し寂しい話だが、AIの時代になって、その「誰でも挑戦できる入口」まで狭くなってしまうのだとしたら、それは技術の進歩とは別の意味で、大きな変化なのかもしれない。