MBAで一番役に立ったのは、マーケティングだった

もう20年くらい前になるだろうか。

私はエンジニアとして働く中で、「技術だけでは限界があるかもしれない」と感じ、日本国内のMBAに通った。

別にアメリカの有名大学ではない。

当時はぼんやりと、エンジニアから経営者になれたらいいな、と考えていた。

結局、経営者という仕事は私にはあまり向いていないと分かり、その道には進まなかった。

MBAでは、起業ごっこをしたり、ビジネスプランを作ったり、ケーススタディを議論したりと、それなりに楽しい時間を過ごした。

ただ、正直に言うと、学んだことの多くは今の仕事ではあまり使っていない。

私は一人で仕事をしているフリーランスだ。

組織論や人事制度、大企業向けの経営戦略などは、今となってはほとんど出番がない。

そんな中で、今でも役に立っていると思うのがマーケティングだ。

MBAで最初に学んだのは、「良い商品は自然には売れない」という、ごく当たり前の事実だった。

まず認知される。

興味を持ってもらう。

比較検討される。

そして、ようやく購入される。

この流れを意識するようになった。

今の私にとっての商品は、システムでもサービスでもない。

私自身である。

「どうすれば私という存在を知ってもらえるのか。」

「どうすれば仕事を頼みたいと思ってもらえるのか。」

この考え方は、今でも仕事の中心にある。

認知は、一回の奇跡的な出会いから生まれるものではない。

基本的には、大量の接触の積み重ねだ。

大企業ならテレビCMを流したり、広告を打ったりする。

私なら、このブログを書いたり、LinkedInで発信したり、人と会ったりすることになる。

一つひとつの接触から仕事につながる確率は、おそらく限りなく低い。

だからこそ、数を積み重ねるしかない。

知ってもらって、ようやく自分の強みを説明する権利が得られる。

そして説明できたとしても、実際に仕事を依頼してもらうまでのハードルは、やはり高い。

こういう考え方は、エンジニアとしてコードを書いているだけでは、なかなか身につかなかったと思う。

技術力だけではなく、「どうやって自分を市場に届けるか」という視点を持てたことは、MBAで得た一番大きな収穫だった。

……とはいえ、現実は厳しい。

MBAの学費は決して安くなかった。

20年経った今、「あの投資は回収できましたか?」と聞かれたら、少し考え込んでしまう。

マーケティングという武器は確かに手に入った。

でも、それだけで学費の元が取れたかと言われると……。

費用対効果だけで評価するなら、残念ながら今のところはマイナスである。

ROIで評価するなら、今のところ投資回収には至っていない。少なくとも私なら、この案件には投資しない。