仕事を断れない人ほど危ない。芸人とフリーランスに共通する罠
ある有名なお笑い芸人が、心身の不調で医師から長期休養を勧められたというニュースを見た。
その後、観光地で焼肉を食べている様子がSNSで拡散され、「元気そうじゃないか」という声もあれば、「心身という表現なら、体ではなくメンタルなのでは」という声もあった。
もちろん本当の病状は本人と医師にしか分からない。
外から見て元気そうだから大丈夫、と判断できるものではない。
それを見て思い出したのが、別のお笑い芸人の話だ。
忙しすぎた時期に自律神経失調症になり、歩いている途中でズボンが濡れていることに気付いた。
「雨かな?」
と思ったら、自分がおしっこを漏らしていたという。
笑い話として語っていたが、かなり深刻な話だと思う。
芸人という仕事は、売れるまでの期間が本当に厳しい。
何年も仕事がなく、アルバイト生活を続ける人も珍しくない。
だから一度売れると、「次がある保証なんてない」という感覚が染み付いている。
仕事の依頼が来れば断れない。
多少無理をしてでも受ける。
その結果、気付いたときには心も体も限界になっている。
この話、実はフリーランスもあまり変わらない。
私もフリーランスになって十数年になるが、仕事を断ることはほとんどない。
「次の案件が来なかったらどうしよう。」
「この取引先との縁が切れたらどうしよう。」
そんな気持ちは、多くのフリーランスが一度は経験しているはずだ。
だから忙しくても受ける。
多少無理でも頑張る。
気付けば休日も仕事のことを考えている。
仕事があること自体はありがたい。
しかし、仕事を失う恐怖だけで働き続けると、心は少しずつ削られていく。
体の病気なら検査で見つかることも多い。
しかしメンタルは、自分でも限界が分からないまま壊れてしまうことがある。
「まだ大丈夫。」
その一言が一番危ない。
私は若い頃ほど無理はしなくなった。
昔は徹夜もしたし、休日出勤も当たり前だった。
でも今は、それより長く働き続けることのほうが大事だと思っている。
仕事のスケジュールだけではなく、自分のメンタルにも余白を作る。
それもフリーランスに必要な自己管理なのだと思う。
仕事を失うことを恐れる気持ちは分かる。
しかし、仕事は代わりがいる。
案件も会社も、誰か別の人が引き継げば回っていく。
でも、自分の心と体は代わりがいない。
壊れてから「少し休めばよかった」と思っても遅い。
皮肉なことに、一番仕事を失いたくない人ほど、無理を重ねて本当に仕事ができなくなる。
仕事を断れない人が最後に断ることになるのは、仕事そのものなのかもしれない。