事実は一つでも、真実は無数にある
歴史系のYouTubeを見ていた。
話しているのは、ちゃんと歴史を研究している学者の人なので、少なくとも私が普段暇つぶしに見ている怪しい歴史動画よりは信頼度が高い。
話題は第二次世界大戦の日本軍、そして真珠湾攻撃になった。
その中で面白い話があった。
旧日本軍は過去の戦史を研究し、それを作戦立案の参考にしていたらしい。ここまでは普通の話なのだが、問題は参考にしていた「戦史」の中身だ。
日本国内の古い合戦の記録には、江戸時代など後世になって物語として書かれたものもある。つまり、どこまで史実なのか怪しい話まで混じっている。
歴史上の奇襲作戦を研究し、真珠湾攻撃のような作戦を考える。
その学者は冗談交じりに、「今で言えば『キングダム』のような歴史漫画を読んで軍事作戦を考えるようなもの」と話していた。
キングダムを参考に作戦会議をしているようなものだと思えば、そりゃ日本は戦争に負けるわな、と思ってしまう。
もちろん半分は冗談だ。番組の本筋でもなく、ちょっとした余談だった。
ところが、真珠湾攻撃をアメリカ側から見ると、また評価が変わる。
当然、アメリカでは「卑怯な奇襲」という受け止め方が強い。しかし軍事作戦として見れば、その作戦は洗練されており、真珠湾攻撃そのものは大きな打撃を与え、アメリカの即時反撃を難しくした。
たしか湾岸戦争を指揮したノーマン・シュワルツコフ将軍の解説だったと思うが、「もしあの時点でアメリカが講和していれば、戦略的には日本の勝利だった」という趣旨の評価を聞いた記憶がある。
もちろん、実際にはアメリカは講和しなかった。
結果だけ見れば、日本はその後、圧倒的な国力差で敗戦する。
しかし「真珠湾攻撃は無謀な作戦だった」という日本側からの見方と、「軍事的には非常に有効な奇襲だった」という見方は、同じ出来事を語っている。
どちらかが完全な嘘というわけでもない。
見る位置が違うだけだ。
事実は一つしかない。
1941年12月7日、日本軍が真珠湾を攻撃した。
これは変わらない。
しかし、それを「卑怯な奇襲」と見るのか、「大胆な軍事作戦」と見るのか、「戦争全体では失敗につながった作戦」と見るのかで、話はまったく違ってくる。
同じものを見ているのに、評価は正反対になる。
事実は一つでも、真実は無数にある。
だから歴史は面白いし、たぶんYouTubeを一本見ただけで「真実を知った」と思うのが一番危ない。