なんでフリーランスになったんだっけ?

もう15年くらいフリーランスをやっていると、会社員だった頃のことが、ずいぶん昔の出来事に思えてくる。

そんなことを考えたのは、今年も税金と社会保険料の請求通知が一気に届いたからだ。

毎年のことだが、封筒を開けるたびに「高っ……」と声が出る。

外国は事情が違う国もあるだろうけど、日本の会社員は税金や社会保険料を会社が手続きをしてくれる。もちろん実際には給料から引かれているだけなのだが、「自分で払う」という感覚はあまりない。

フリーランスになると、それを全部自分で払う。

払うたびに国に存在をアピールされている気分になる。

……おっと、税金の愚痴になってしまった。

税金の話は世界共通でイライラするので、本題に戻そう。

「なんで自分はフリーランスになったんだっけ?」

改めて思い返すと、理由は意外とシンプルだった。

会社が買収されたのである。

そして、新しい組織で開発部門のトップになったのが、いわゆる「工数管理マン」だった。

技術より管理。

現場より数字。

「技術なんて分からなくてもマネジメントはできる」というタイプだ。

もちろん管理は大事だ。

でも、開発組織のトップが技術をまったく理解しようとしないと、現場との距離はどんどん離れていく。

一方で、私が本当に尊敬していた直属の上司は技術者だった。

困ったら相談できるし、技術の議論もできる。

「ああいう人になりたい」と思える上司だった。

ところが、その人が真っ先に退職へ追い込まれた。

日本では簡単に解雇できないので、じわじわと退職勧告を受け、結局会社を去っていった。

その頃には私も、

「ここで頑張る意味はあるのかな」

と思うようになっていた。

転職も考えた。

でも、幸い知り合いの会社が「フリーランスで来ない?」と声を掛けてくれた。

軽い気持ちで始めたのが、この生活の始まりだった。

「数年やったら会社員に戻るかな」

そんなことを考えていた気もする。

気が付けば15年。

人生って分からないものである。

ちなみに、辞めた会社はその後、アクセンチュアに買収、吸収された。

会社の名前そのものが消えた。

当時一緒に働いていたメンバーも、ほとんど残っていない。

そういえば先日、元同僚のSNSプロフィールを見たら、

「元アクセンチュア」

と書いてあった。

いや、気持ちは分かる。

確かに最後はアクセンチュアになったかもしれない。

でも私の感覚では、

「アクセンチュアに買われた会社にいた人」

なんだよなあ、と少し笑ってしまった。

まあ、一日でも所属していれば嘘ではないが。

そんなことを考えると、あのときフリーランスになったのは、人生で珍しく流れに身を任せた選択だった。

少なくとも今のところ、その流れは悪くなかったと思っている。

……税金の請求額を見るまでは。