量子コンピューターって本当に来るの?少なくとも、私の現役中には無理だと思ってる話
最近、「AIの次は量子コンピューターだ!」みたいな記事をよく見る。
まあ、気持ちは分かる。 実際、量子コンピューターという技術そのものは本当に面白い。SFみたいな話が、ちゃんと物理学ベースで進んでいる。
ただ、エンジニアとして冷静に見ると、
「これ、俺たちが現役のうちに普通に使う世界くるか?」
と言われると、かなり怪しい。
少なくとも、会社のオフィスに量子コンピューターが置かれていたり、スマホに載っていたり、一般企業が普通に業務利用する未来は、かなり遠いと思っている。
今日はその理由を、昔ちょっと物理をやっていた側の視点も含めて、普通に整理してみる。
そもそも量子コンピューターって何をしてるの?
普通のコンピューターは、「0」か「1」で計算している。
これは昔から変わらない。 AIもクラウドもスマホも、最終的には全部これ。
一方、量子コンピューターは、量子力学の「重ね合わせ」という性質を使う。
ざっくり言えば、
- 0でもあり
- 1でもある
みたいな状態を使って計算する。
よくある例えだと、
- 普通のビット → 表か裏か止まったコイン
- 量子ビット → 高速回転してるコイン
という感じ。
この「回転中の曖昧な状態」を大量に使うことで、特定の問題に対しては、理論上ものすごい速度が出せる。
ここまでは本当に夢がある。
ただ、現実はかなり厳しい
実際に調べると、今の量子コンピューターは「未来の実験装置」に近い。
特に厳しいと思うのがこの辺。
① ノイズに弱すぎる
これが最大の問題。
量子状態というのは、とにかく壊れやすい。
温度変化、振動、電磁波、ちょっとした外乱で簡単に計算が崩れる。
さっきのコインの例で言えば、
高速回転しているコインに、横から軽く息を吹きかけるだけで倒れてしまう感じ。
なので、普通のコンピューターみたいに雑に扱えない。
② 冷却装置がヤバい
現在主流の超伝導方式だと、絶対零度近くまで冷やす必要がある。
絶対零度というのは、ほぼマイナス273℃。
しかも、本体より冷却装置の方が巨大。
ニュースで見る量子コンピューターって、あのシャンデリアみたいな金色の装置が本体っぽく見えるけど、実際には「冷却システム」が大部分だったりする。
あれを見て、
「これはデータセンター向けだな…」
とは思った。
少なくともノートPCに入る未来は、今の延長線上には見えない。
③ エラー訂正がほぼ地獄
量子コンピューターはエラーが多すぎるので、「量子エラー訂正」が必要になる。
ただ、このコストが凄まじい。
実際には、
- 本当に使いたい量子ビット
- それを監視する大量の補助量子ビット
が必要になる。
理論上は、役に立つ計算を安定してやるには、数百万規模の量子ビットが必要とも言われている。
でも現在は、まだ数百〜数千量子ビット級の段階。
もちろん進歩はしている。 ただ、今のAIブームみたいな速度感で一般化するかというと、かなり違う。
④ 別に万能ではない
ここが一番誤解されてる気がする。
量子コンピューターは「全部が速くなる魔法のマシン」ではない。
向いているのは、
- 分子シミュレーション
- 組み合わせ最適化
- 一部の暗号関連
- 特定の数学問題
みたいな領域。
逆に、
- Webブラウザ
- 動画編集
- メール
- 普通の業務システム
- SNS
みたいなものは、普通のCPUやGPUの方が圧倒的に効率がいい。
なので、「量子コンピューターで全部置き換わる」というより、
スーパーコンピューターの特殊部隊
みたいな立ち位置になる気がしている。
⑤ 人材が少なすぎる
これも大きい。
量子コンピューターって、
- 量子力学
- 数学
- 電気工学
- コンピューターサイエンス
全部必要。
つまり、人材難易度が異常に高い。
普通のITエンジニアの延長線上というより、物理学研究寄り。
だから、ソフトウェアエンジニア不足どころの話ではない。
AIとは「進化の方向」が違う
AIは、既存のGPUやクラウドの延長線上で爆発した。
だから急速に普及した。
でも量子コンピューターは、そもそも物理レイヤーから違う。
これは「新しいCPU」ではなく、
計算機そのものを別の物理法則で作ろうとしてる
レベルの話。
難易度が違いすぎる。
とはいえ、夢のない話ではない
誤解してほしくないのは、
「量子コンピューターは意味がない」
と言いたいわけではない。
たぶん今後、
- 新薬開発
- 材料研究
- 金融
- 暗号
- 国家レベルの研究
みたいな分野では、本当に重要になると思う。
ただ、少なくとも私みたいな普通の業務系エンジニアが、
「来年から量子コンピューター対応スキル必須!」
みたいになる未来は、あまり想像していない。
まとめ
量子コンピューターは、たしかに未来技術としては面白い。
でも現状を見ると、
- ノイズに弱い
- 冷却が超大変
- エラー訂正が重すぎる
- 用途が限定的
- 人材不足
と、課題が山積み。
なので個人的には、
「AIの次は量子だ!」
というより、
「まだしばらくは研究室の超高級実験装置」
くらいの距離感で見ている。
ただ、一つだけ強調したいのは、
「こんなの絶対無理だろ」と思われていたものが、実際にここまで来ている
という点。
私は学生時代、素粒子物理を専攻していて、量子力学も勉強していた。 当時、量子計算のアイデア自体は理論として存在していた気がする、 たしかファインマン(物理学の教科書ではお馴染みの人)が提案したらしい。 でも
「それを実際にコンピューターとして動かす」
みたいな話は、少なくとも自分の周囲では聞いたことがなかった。 あくまで理論上のお話
それが今では、
- IBM
- Intel
みたいな巨大企業が、本当に実機を作っている。
もちろん、実用化にはまだ巨大な壁がある。 でも逆に言えば、
「量子状態を制御して、実際に計算機として動かしている」
という時点で、人類としてはかなり異常なところまで来ている。
なので、「すぐ普及する」と煽る気もないが、
「ただの夢物語だったものを、現実に引きずり出してきた」
という意味では、すでに歴史的な技術だとは思っている。